HRK blog

吃音症に関することや、ゲーム関連情報を発信していきます!

吃音の脳機構を論文から読み解く1

長らくお待たせされた方もいるかもしれません。

 

吃音の論文を読もうの会、第1回目です(そんな会はない)。

 

今回は、吃音症を語る前にPart2で参考にさせていただいた論文の内容についてまとめていきます。

 

以下の論文を参考にしています。

発話中枢機構と吃音のメカニズム 今泉 敏 音声言語医学44;111-118,2003

 

さっそく行ってみましょう!

 

冒頭に結論を持ってきますが、非吃音者と吃音者では脳の活動パターンが全く違うそうです。そして吃音者でも、すらすら喋れている時には吃音パターンの脳活動は消失するようです。その理由を見ていきましょう。

 

研究1

ある実験で、文章を単独で読む課題と、他人の音読に合わせて読む課題を行いました。そしてそのときの脳の活動を記録したそうです。

 

すると、非吃音者の単独音読では、一次運動野、補足運動野、外側運動前野下部、一次聴覚野以外の側頭聴覚野前部、視覚野、小脳が活動しました。視覚野と小脳は左右両側、それ以外は左脳の部位が活動していました。これは他人の音読に合わせた時でも同じでした。

(言葉がわからない場合は、以前のブログをご覧ください)

 

hrk90360976.hatenablog.com

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 しかし、吃音者の活動パターンは非吃音者のものとは異なっていました。

一次運動野は右が有意に大きく、補足運動野の活動は、規模も範囲も大きかったようです。また、外側運動前野下部の活動も非吃音者より大きく右優位でした。小脳の活動も非吃音者の倍以上の強さを示しました。

非吃音者に見られなかった活動が、左右島皮質、左前障、左視床外側部、左淡蒼球に観測されました。

非吃音者と同じように活動していたのは外側運動前野下部のみでした。

聴覚野の活動はほぼなく、流暢発語に関連する左前頭葉下部も抑制されたようです。

逆に、吃音者の斉唱音読課題では運動関連領野の過活動は軽減ないし消失されましたが、一次運動野と補足運動野の右優位性は解消されませんでした。

 

運動関連領域の過活動と右優位性について語られていましたので紹介紹介


優位半球(左)の活動が低いというより、非優位半球の活動が強すぎるという見解が多い。小脳の過活動と帯状回の過活動を示唆する研究が多い。吃音者の発話が非吃音者に比べて自動性が低く、自己発話のモニターと流暢な発話の制御に問題を抱えることを示唆している。

 

まとめると、本来言語中枢は左半球にあるはずなので、非吃音者が言葉を話すときには脳の左側が活動するんですが、吃音者はなぜか脳の右側を活動させている、ということになります。

そしてその原因として、発話の自動性が低い、つまりはしゃべるときに何か余計なことを考えているとか、言葉を出そうと意識下で努力しているとか、があるのではないか?ということですかね。

 

研究2

次の内容です。

構音コードが生成される前に発語運動が始動するという「時間制御障害」説を提案した方たちがいます。

 

↓ わかりやすく

 

本来は、しゃべる体制が完成してから言葉を発するのが発語までの流れですが、言葉を発しようとするけど、しゃべる体制が整っていないので言葉が出てこない、というのが「時間制御障害」。

 

以下研究内容

独語名詞単語を視覚提示し、その800ms後に発語マーカーを示して音読発語を促す課題を行い、脳磁場を計測しました。
そして、3段階の共通した時間的経過が観察されました。
1)単語提示から200msまでの時間帯では、視覚野、左右の後頭・側頭下部領域に強い活動
2)単語提示から200~600msの時間帯では、視覚野の活動に加えて左右前頭葉下部、左側頭葉上部、左右頭頂葉下部に活動が出現
3)左右の運動野を中心とする前頭・頭頂葉領域と頭頂上部に活動が出現し,音声開始まで持続した。

ここまでは、非吃音者、吃音者共に同様だったのですが、異なっていたのは次からです。

4)100~200msの時間帯で左運動野の活動は吃音者の方が大きかった
5)200~275msで非吃音者で観測された左前頭葉下部の活動が、吃音者では観測できなかった
6)発話中(1025~1400ms)右前頭・頭頂葉領域の活動は、非吃音者の方が大きかった

ここでも、左前頭葉下部(言葉の流暢性に関与)、右前頭頭頂領域(本来言語中枢は左)などの違いが分かりますね。さらに・・・。

 

前頭葉下部(Broca野)と運動野(前頭・頭頂葉領域)の活動開始時間は、非吃音者でそれぞれ230±27ms、348±58ms。吃音者で377±44ms、197±32msでした。

この結果からは、非吃音者ではBroca野が活動した後に運動野が活動を開始するのに対して、吃音者では逆であったことが分かります。

 

今回は以上です。

すこしでも興味を持つことができたでしょうか?

まぁ脳の話はどれもこれも難しい話ばかりなので、「へぇ~」ぐらいの気持ちで見ればよいかと思いますけどね。

あと、吃音症の機序についてはおそらくまだ正確なものはないと思うので、今回の内容についても、「必ず」ではないことをご理解下さい。

 

それではまた(次は英語の論文読む。多分)

 

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